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シリーズ(2)「弱者切り捨て」の医療制度改革を阻止しよう−(2005/10 掲載)
埼玉県医師会会長(当時) 吉原 忠男
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【目 次】 |
昨年11月の混合診療全面解禁署名運動の際には、国民、県民の皆さんに多大なご協力を頂きありがとうございました。シリーズ(1)で述べましたように、全面解禁は食い止めることができました。
これで医療制度改革は企業の営利追及型ではない方向に進むことを、我々は願っていましたが、こんどは医療費削減という考え方に基づいて患者負担増加の医療制度改革案が出て来ました。
今年10月27日の経済財政諮問会議で、ある民間議員が出した案は次のようなものです。
これらについて、厚生労働省と日本医師会は(表1)のような考え方を示しています。
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尾辻元厚生労働大臣は「この民間議員試案は短期策を優先する、まずカネありきの考え方。厚労省の試案とは根本的に哲学が違う」と疑問を呈し、小泉首相は「医療は大事だが、経済財政は無視できない。何らかの管理目標がなければ保険はもたない」と民間議員を支持しています。
昨年、混合診療全面解禁を行おうとした時点で、国民皆保険が持たないだろうということをあまり認識していなかった小泉首相としては、今回「保険は持たない」といったことは皆保険制度の重要性をようやく認識してくれたものと評価します。しかし、「何らかの管理目標を」ということは一理あるにしても、患者負担増加を伴った管理目標の数値を定めることは我々の言う「弱者切り捨て」になります。
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| 表2 国内総生産(GDP)に対する総医療費の割合 | 表3 世界保健機関(WHO)の発表する健康達成度 |
日本では国内総生産(GDP)に対する総医療費の割合は、(表2)のとおり世界で17位(7.9%)です。
反面WHOの評価では、健康寿命(人間が健康でいられる年齢)が1位、平均寿命も男女ともに1位、乳幼児死亡率は世界一低く、日本の健康達成度の総合評価は当然一位です(表3)。
これは、国民の健康意識が強いこと、すすんで基本検診等を受けていること、そして、我々医療者がいかに低コストで診療を行うよう努力しているかということ、そして国民皆保険制度が我々を守っていることなどによります。
我々は医療機器の整備などを行って医療の質を高めるために、診療報酬改定のプラス改定を望んでいます。プラス分は必ず患者さんに還元されます。
しかし政治情勢が切迫した今となっては、プラス改定の点は我々医師会はそれほど強く望んではいません。それでも、マイナスではこれ以上やっていけなくなる病院や診療所が続出してきます。
最近の新聞やどこかのホームページに民間病院や診療所が黒字という報道があり、日本医師会が抗議しましたが、中医協の医療経済実態調査によると、個人病院は前年度比伸び率マイナス10.2%、診療所も同比率はマイナス2.9%となっております。経費の切り詰めや医療機器の更新をあきらめた結果、医業経費がマイナス4.4%上回ったため、ややプラスという数字が出た訳で、厚生労働省の統計方法で補正すると伸び率はマイナス4.3%となります。単純に切り詰めた分と伸びた分(医業経費)の差だけが黒字になったと大きく報道された訳です。
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こうした状況のなかでいま推し進められようとしている医療制度改革案に対して、我々保健医療関連団体協議会(表4)では、次の5点について強く反対し、全国的に署名運動を展開しています。
1)高齢者や患者負担増反対
現状の高齢者1割負担が、2〜3割となります。また、以下の各項目のように高齢者以外の患者さんの負担も増加します。
2)高額医療、人工透析の患者負担増反対
自己負担限度額が引き上げられ、高額医療を受けている患者さんや人工透析を受けている患者さんの負担が増加し、命にかかわる事態が発生することが予想されます。
3)入院時の食費・病床代(部屋代)の自費負担に反対
これらはいわゆるホテルコストと言われているもので、これらが全額自己負担となりますと、患者さんの待遇の差別化が進み、低所得の人は入院ができなくなります。
4)保険免責制度に反対
これは診察を受けたときに全員いやおうなしに1000円程度の自己負担をせざるを得ないという制度です。
例えば、初診料2740円、処方箋料710円が、レントゲンや血液検査など何も検査をしなかった時の、現在の診察料です。
現行制度では、高齢者等以外の通常の保険では、その合計額3450円の3割、つまり1035円支払えばよいのです。
しかし1000円免責制度では、3450円からそれを引いた2450円の3割、735円が保険の窓口負担、総計1735円となります。1035円が1735円と、なんと7割窓口で高くなる訳です。場合によっては窓口負担分が3倍近くになることもあります。お断りしておきますが、この免責分1000円はすべて公費が浮いたということであり、医療機関に入るものではまったくありません。
皆さんは、一回診療を受けるたびに受益者負担という名目の元に、国庫に1000円の寄付を強制される訳です。これは国民皆保険制度の原則に反するものです。これこそが昨年我々が反対した混合診療全面解禁の一部なのです。高額の高度先進医療ではなく、低額部分でありますが、一回毎に徴収されるので馬鹿になりません。
このような暴挙が許されるはずはなく、最近では、保険免責だけはやはり止めようという意見が、政府内部の有識者の間でも出始めています(11月12日現在)。
5)医療費総枠管理の反対
これはさきに述べました伸び率の数値目標設定です。数ヶ月前より新聞に出ておりました「骨太2005」政府案は、国の経済指標(GDPなど)に合わせて医療費の総枠を決めて、景気が悪くなれば総医療費は下げよう、という考え方です。逆に景気が良くなれば医療費は上げるのかというと、今まで長年の経過をみても、そのようなことを政府は絶対にしませんでした。例えば、平成初期のバブル時にも診療報酬点数は上がりませんでした。
この総枠管理の概念は、尾辻元厚生労働大臣の言う医療に対する哲学とは全く異なる、経済効率だけで医療を考える誤った考え方であります。私はかねがね主張しておりますが「医療は国民の健康を守り国力増進のための投資である。決して消費ではない。」という考えでおります。まして、(表2)のように日本は世界17位という低コストで世界に冠たる医療成績を挙げております。
日本はもっと国費を医療に回すべきなのです。財源はどうするのだ、対案を出せ、と政府は言うでしょう。しかし、それを考えるのが政治家ではないでしょうか。対案の一つとして、日本医師会はタバコ1本1円の値上げで3000億円浮くと提唱していますが、さらに我々埼玉県医師会では贅沢品の消費税を上げるいわゆる豪奢税を創設するように求めています。そうすれば、シャツなどの下着、普通の衣服、お米、味噌、醤油、魚、肉など普通の食品、水道料、電気料、ガス料など生活必需品に対する消費税は5%に据え置きでも、税による医療費財源は確保できると思います。例えば、50万円の服を着たり、1000万円の乗用車に乗る人達は消費税が10%や20%になっても我慢できるでしょう。生活必需品の消費税を安くすることは、フランスやドイツでは実施しています。
以上のような理由で、我々はこれら5項目について現在の医療改革政府案に反対の署名運動を行っております。
国民皆保険制度を守るために、そして患者負担増を防ぐために、是非ご協力下さるようお願い申し上げます。
署名は、かかりつけ医または近所の医療機関や薬局など保健医療関連機関でお願いします。締め切りは12月10日までです。
集まった署名は日本医師会で全国各都道府県の取りまとめを行い、国会に請願または衆参両議院議長に提出します。よろしくお願い致します。
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